自分だけは大丈夫だと思っていませんか?
胸にしこりがあるのを見つけたり、乳頭から分泌液が出た。とても心配でしょう。「乳がんかもしれない」と不安になってしまうかもしれません。でも、まずは冷静になってください。
しこりに気付いて病院で検診を受けたところ、乳がんだと診断される方は1割ぐらいで、それほど多くはありません。もし乳がんだったとしても7割程度の方は治り、早期発見に至っては9割以上が治ると言われています。
誤った知識のために受診をしなかったり、余計な不安のために情緒不安定になることのほうが、よほど問題です。まず正しい知識をつけ、こんな症状があったら勇気を持って病院へいきましょう。
しこり
しこりにが出来る原因として考えられるものには、大きく分けて3つの状態があります。乳がん、乳がん以外の病気、月経前にできるしこりの3つです。このうち乳がんの比率は低くて、しこりの約9割は乳がん以外の症状です。
年齢の違いでなりやすい病気も変わるようです。一般的には、線維腺腫、乳腺賞、葉状腫瘍、嚢胞(のうほう)、乳腺炎、乳管内乳頭腫があります。
月経前に出来るしこりは痛みがある場合が多く、複数現れることもあります。これはホルモンの影響で体液が乳房組織に集まることが原因でなります。
病気とは関係ない場合が多く、若い方でも起こる可能性があります。感覚としては何となく硬いしこり、という感じのようです。定期検診でしこりが発見されて再検査したけど異常なし。よくよく考えてみると月経前だったという意見も度々あります。
でも、いつまでたっても【しこり】が消えない場合は検診を受けてください。素人的な判断は危険ですから!また、最近は自己検診の方法も雑誌などで紹介されていますが、この方法を間違って行い、しこりがあると勘違いするパターンもあります。
基本的には指の腹でなぞるようにして触診をするのですが、間違って乳腺を摘んでしまうと、しこりと感じてしまいます。自己検診も、【乳がん触診体験】や【自己触診セミナー】などを受けてからの方が良いと思います。
このときに使う触診模型は、医師も研修に使うものなので、貴重な体験が出来ると思います。各都道府県、自治体、民間の企業で行っているようなので、この機会に一度体験してみてはどうでしょう。
乳腺から分泌物
妊娠中や授乳期間中でもないのに、乳頭から分泌物が出てくることを乳頭異常分泌といいます。原因は、【乳腺にある場合】と、【乳腺以外にある場合】とに分かれます。
割合としては【乳腺に原因がある場合】の方が多いです。【乳腺以外に原因がある場合】の主なものには、2種類あります。1つ目は薬剤の長期服用によるもので、抗高血圧薬や抗潰瘍薬、経口避妊薬(低用量ピル)などがあげられます。
2つ目はホルモン分泌に関わる病気で、下垂体腫瘍、甲状腺疾患、卵巣の病気などがあります。【乳腺に原因がある場合】は、良性の乳管内乳頭腫や乳腺症が多いのですが、乳腺炎や乳がんである場合もあります。
分泌物に血液が混ざっている場合はとくに注意が必要です。しこりがないにもかかわらず、乳頭異常分泌だけが症状として現れる「無腫瘤性乳がん」というものがあります。
分泌物に血液が混ざっていることが確認された場合には、すぐに検診を受けてください。視触診やマンモグラフィ(乳房レントゲン撮影)、超音波や分泌液の細胞診断などを受けることになると思います。
病院は、婦人科に行ってしまう方が多いようですが、乳がん専門の乳腺外来や乳腺外科へ行ってください。
地方で乳腺外来や乳腺外科がないこともありますので、その場合は一般外科を受診してください。
透明や乳白色の分泌液が出た場合は、ホルモンバランスの乱れが原因で、乳汁とほぼ同じ成分が分泌されたと考えられ、ほとんど心配する必要はないでしょう。
乳頭異常分泌は、しこりを伴わない乳がんの早期発見に役立ちます。分泌物に血液が混ざっている場合は必ず検診を受けてください。
えくぼ症状
胸のある一部分だけへこんできたり、しこりを軽くつまんだ時に、しこりのすぐ上の皮膚にくぼみができた場合は注意してください。しこりをつままなくても、腕を上げることでくぼみが出来る場合もあります。
【くぼみがえくぼのように見えるので、えくぼ症状と言われます。】胸にくぼみが出来る状態は、しこりが出来ている可能性が非常に高いと思われます。
しかもこのまま放っておくと、さらにしこりが大きくなり乳頭にも変化が出てくる場合があります。ここまでくると、自分でも見ただけでハッキリわかるようになっているでしょう。
乳頭が何となく引っ込んでしまったり、乳頭が引っ張られてしこりのほうに向いてしまったりします。でも、このような状態になってしまっても痛みがないことがほとんどです。
ですから、お医者さんの診断を受けることが遅れてしまうんですね。痛くて我慢できなかったら、誰でもすぐに病院に行きます。そうでないところが、この症状の怖いところです。痛みがないことが、乳がんの早期発見を阻む原因になっているんですね。
「家族にがんがいないから・・」
「くぼみがあるだけで、乳がんと決まった訳ではない・・」
こんな風に自分に都合の良い理由を考えて、自分は乳がんにはならないと思い込もうとしがちなのも分かります。現状の事実は「くぼみ(しこり)がある」ただそれだけです。そのくぼみ(しこり)の原因は何なのか、勇気を持って医師のところへ行ってください。
乳頭の湿疹
乳頭にしつこい湿疹ができたらパジェット病の可能性があります。パジェット病は乳がん全体の約0.5~1%を占めます。しこりは作らず、乳輪周辺に治りにくい湿疹のようなものができます。
皮膚科にいき軟膏を塗っても治らないので、いろいろ相談して乳腺専門医のところに診察に来て初めて分かるようです。
症状は湿疹に似ていて、かゆみやひりひりする痛み、それから乳頭からの出血、分泌などがあります。
あまりにも治らない湿疹なら、パジェット病を疑ったほうが良いでしょう。
しこりの感じ
一般的にしこりは、たいてい片方の乳房にできます。硬いことが多く、石のように硬い場合もあります。軟らかそうでも芯がある感じ(根があるような感じ)がします。
この指先に感じる硬さの度合いはがんのある深さに関係があります。皮膚の表面に近ければハッキリしこりを触れますが、深いところにあると何となくしこりがある気がするというだけの場合もあります。
また、境界が分かりづらくてギザギザした感じ(滑らかな円状ではない)のことが多いようです。皮膚の上から触った感触は、ポケットに消しゴムを入れて厚手の服の上から触った感じと表現されます。
初めて自分で触診をする方には分かりづらいかもしれませんね。それから痛みはないことのほうが多いようです。しかし、これらは一般論で触ったらクルクル動いたり、痛みがあったりとさまざまです。
長年携わっている医師でさえ、触っただけでは乳がんと診断することが難しい場合が多々あるようです。ですから、自分で触ってみただけで判断するのは危険と言えるでしょう。
自己検診はあくまでも自己検診に留めておき、詳しい検査は医師の診察をうけるようにしましょう。何となくしこりがあると思った場合は、すぐに検診の申し込みをしましょう。